最強脳 ―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業-読書日記後編

前回の「最強脳 ―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業-読書日記前編」の続きです。

本書を時折引用し、その後に行ごとに突っ込みや感想を交えながら進めます。

そもそも冒頭の「日本の読者の皆さんへ」という行で、”私たちの脳の取り扱い説明書”とするこの本について

実は、この本の結論は一言で言えてしまいます。運動をしようーそうすれば脳は確実に強くなる。

そう語られています。この一言について延々と説明下さってる書なのです。ひじょうにシンプルです。

脳に一番いのは体を鍛えるエクササイズなのです!数多くの研究で、運動があらゆる認知機能を高めてくれるのが分かっています。発想力も高めてくれます。記憶力や集中力もです。睡眠の質も改善され、ストレスにも強くなります。

ここに要約されています。

運動をすると、ドーパミン以外にも、幸せを感じるエンドルフィンが出ます。エンドルフィンというワードは知ってはいたけど、痛み止めの作用もあって運動した後に出るのは好都合なのだそうです。

普段文芸書ばかり読んでいるので、脳は使っているはずなのに、物質の名前まで考えたことがなかった。「科学的にも証明されてる」と人との会話で出てくることはあるけれど、本当に理系に弱いので通ってこなかった分野。これからは自分の体のこと、脳のこと、その状態のこと意識していきたいです。

運動の後にもらえるドーパミンの方が、スマホからもらえるよりずっと量が多いというのです。運動ってそんなにいいの?

「ごほうび」をもらえるようになるには、ある程度の期間、運動を続けなければいけませんが、そのおかげで筋肉や肺や心臓も強くなります。ドーパミンは昔、ヒトが食べ物を探し、もっと良い住処を探して移動したりするためには体を動かさなくてはなりません。そのため、脳はその人が運動すると「良いことをした!」とごほうびをくれるように進化したのです。(本文より引用)

心臓を強くするためならこれくらいの努力はしたい。運動しすぎると息切れするので心臓に悪いと思って避けてたけれど、この説は眼からウロコや~ってかんじです。

過度でなければ運動することって良い事しかないのですね。

脳の中にある側坐核という細胞の集まりはグリーンピースより小さなサイズで、好きだという感情、例えば「ケーキが好き」「ゲームは楽しい」といった気持ちがすべて集まった、中心とか中核のような部分。

好きなことをしたら(例えばケーキを食べたら)ドーパミンが即座に送られます。側坐核はそれを受け取って、ごほうびを出してくれます。気分を良くしてくれるのです。適度な量のドーパミンを受け取るには側坐核が正しく設定されてないといけません。受け取る量が多すぎても少なすぎても気分の良さはやってこない。(本文より引用)

また難しい漢字の聞き慣れない脳用語が飛び出しました。ゲームは全くしないのですが、ケーキは大好きです。チョコレートも大好きです。ポテチがやめられないのはドーパミンのせいですね、きっと。

好きなドラマを見逃し配信で見ながらポテチとキンキンに冷えたカルピスソーダで味わってる時間が至福。これもドーパミン出てるんでしょうかね。運動を増やせばバランスが変わってくるでしょうか……

「ADHDの人の側坐核は少し違った働き方をすることがある。」

まさにADHDの私はぬぬ?と要注視モードに。

ドーパミンを受け取るのが苦手で十分に受けとれないことが原因で集中しずらいそうなのです。なるほど。

「運動で集中力を上げるのはADHDの人の方が特に効果的」

おっ、希望が見えてきた。

「どの情報を意識に届けるか決めているのは脳の中央付近にある「視床」。」

またまた新たな用語が飛び出した。

「その瞬間に利用したい情報を選び出し、それ以外にはフィルターをかけて捨ててしまう。そのフィルターを機能させるにはドーパミンが必要になる。」

脳のなかでフィルターかけたり捨ててくれたり、無意識に色んな動きしてくれてるのですね、思わず自分の脳にお疲れーと声をかけてしまう。

衝動を抑える前頭葉

聞いたことはあるけどまた新しい脳の用語が!

「脳は生きている限りずっと成長を続け、「脳は後ろから前に向かって成長する」と言われる」

へー、はじめて聞いた。

「一番前の方にある前頭葉が完成するのは、なんと25歳くらいになってから」

ビックリ。25歳くらいから脳も衰えていくのかと勝手に思い込んでました。脳は脳でも記憶力を司るところ、ここはこれ担当、などいろいろあるのですね。

前頭葉は衝動を抑えたり、ブレーキをかけたりする脳の部分だそうです。

ドーパミンのシステムは子供の頃にはすでに機能していて、10代の頃は活発過ぎるくらいです。つまり、10代の子供の脳はごほうびに非常に弱いということになります。ブレーキはまだ作ってる最中なのに今すぐ何かしたいという衝動は立派に機能している。実はそれが子供や若者がごほうびをたくさんくれるスマホのえじきになってしまう理由なのです。(本文より引用)

なるほどなるほど。「スマホ脳」もやはり読みたい。こういう面では若くなくて良かった。

「たいていの場合、スマホに届いたメッセージを読んでいる時よりも、通知が来た時の方が、脳の中でたくさんごほうびが出ているそうです」

これも目からウロコでした。

「スマホの良い面を取り入れながら、ドーパミンのわなにはまらないようにすることが大切」

まさにまさに。

「体を動かずことに慣れると、運動する時にもごほうびが出るようになります。これから外に出て自転車をこごう、友達とサッカーしよう、などと考えただけで少しドーパミンが出るようになる」

梅干しのことを考えると唾液が出るアレかー。

題10章 記憶力を良くする はメモすることが多かった。

目印となるタグをつける、というのが文系の私には少しときめいてすんなり受け入れられた。

美しい秋の日に「なんて気持ちの良い日なんだろう。この瞬間を覚えておきたい!」覚えておくためには海馬が記憶を細かく分けてそれぞれにタグ(目印)をつけ、長期記憶として大脳皮質のあちこちに保存します。

その作業には数時間から一日かかります。まずは海馬がその記憶を保存すべきかどうかを決めてから作業が始まるのです。

何年もたってから、何かのタイミングでその瞬間を思い出すこともあるでしょう。

その時にはあちこちに散らばっている断片を、海馬がタグをたよりに集めてひとつの記憶に戻します。しかし必ずしも記憶全体が戻ってくるとはかぎりません。

カサカサという落ち葉の音を聞いて、理由は分からないけれど幸せな気持ちになるだけかもしれません。それは、その時の記憶に「幸せな気分」という感情のタグがついていたからです。

逆に何の感情もわかなかった出来事であれば、覚えておいても無駄だと判断されてしまうのです。(本文より引用)

少し長い引用になりましたが、本書で一番気に入った行なので取り上げさせていただきました。ちょっとロマンチックじゃないですか?

こういうことなら普段から実践してる気がします。このタグ付け、「幸せ上手」への第一歩かもしれませんね。

海馬は英語でヒポカンパス タツノオトシゴの学名だそうです。「海馬」がぐっと身近になりました。

そして、「忘れる事も重要」という行も印象的です。

「記憶の容量は驚くほど大きい 少なくとも1ペタバイト(百万ギガバイト)本がいっぱいにつまった図書館1万軒ほどの量」

だというのです。すごくないですか?図書館一万軒がこの小さな頭の中に詰まってるかもしれないと思うと。脳って宇宙やな、っていう結論に。

図書館で例えるのが本好きにはぐっときますね。

「何もかも覚えていたら脳の中で記憶があふれてしまい重要な記憶を見つけずらくなってしまう。そのため、いらない記憶は忘れるように出来ている」というのです。

良かった。忘れたいこと山ほどありますからね。

特に人間が忘れるのは「痛み」です。

うんうん、良かった。痛みは忘れたいです。

運動記憶パターンの学習についての章も印象に残りました。ピアノを習っていたので、勝手に指が動く感覚は身に覚えがあります。

自転車に初めて乗るのも海馬が活躍する。というのも納得。記憶喪失になったら乗れなくなってしまうかもしれませんよね。

「練習している間に使われているのは短期記憶で、充分に練習すれば、練習した動きが体の長期記憶に「固定化」される」そうです。

記憶の小道を作る」という文言にも惹かれました。

神経を通じてシグナルを送り合ってつながる。細胞同士のつながりの強さは、何回連絡を取ったかによって変わる。そのことのたとえに「森の中の小道のような感じ」と出てきました。

「初めて何かを経験する度に、何か新しいことを学ぶ度に、新たに記憶の小道が出来る。」

これは他の何かでも読んだことがあります。初めての土地に行く、「旅行」はとても脳に良い、という文章に出会いました。何で読んだかはちょっと思い出せませんが。

記憶の小道、たくさん通り過ぎていきたいものですね。

どんな形の記憶にしても、覚えておくのを手助けする一番良い方法はやはり運動につきます。運動すると海馬に多量の血が流れます。海馬だけでなく脳の他の部分にも血がたくさん流れ、それがさらに記憶を助けてくれます。

「多量の血が流れる」と文字で見るとどうしてもグロい映像を想像してしまうこの固定観念も崩さねば。流れよ、私の海馬の血のめぐり!くらの心持でいなければ。

しかし本書で唯一、それホント?と思う事もありました。

それは↓

「固定化」はすぐに起きない。テスト直前に勉強しない方が良い理由のひとつ。その日勉強したことは、翌日にならないときちんと記憶にならないのです。

ええーーーー??直前に勉強した方が覚えやすくない??と少し疑問に思いましたが、暗記の要素が高い設問とは限らないしな、と思い直してみました。

運動は記憶力も良くしてくれるけれども、「へとへとになるまでの運動はしない。

これ大事。ここまでになると運動が脳ではなく筋肉にいってしまうから。

週に3回 30分程度のの運動がベストだそうです。

一か月以上定期的に運動するうちに一日中効果が続くようになるそうです。

筋トレ ブランク ランジ 縁のない人生だったけど、テレビ見ながら上げ下げ出来るダンベルでも手に入れてみようかと少し悩んでる。

私の好きな女性作家たち、例えば西加奈子さん、川上未映子さん、九段理江さん、による筋トレやランニングなど運動についてのエッセイを読むと、体を動かすのがいかに気持ち良いかを生き生きとした文章で表現されていて、とても伝わってくるんです。

読後すぐは私もランしようか、など思うのですが一度も実行せず。

走り込んだ後は頭が冴えた状態になり筆が進むのは真実なのだな、と本書を読んで実感しました。

 

「宿題の量が多い時は、いきなり始めるよりも、まず運動をしてからの方が時間の節約になるはずです。暗記ものは歩きながら覚えるのもひとつの手です。ただし車通りのないところで。」

暗記や宿題、机の前に座って行うという概念しかなかった。暗記ものは歩きながら覚えるのか…

そして、「脳トレ 認知トレーニング」について結構切り込んでた。

残念ながら脳トレは脳のトレーニングにはなりません。世界トップの脳研究者70人がそのテーマの研究結果を大量に読み込んで分析したことがありますが認知トレーニングをしてもそのトレーニングが上手くなるだけという結論でした。(本文より引用)

そうなんだー。令和ですね。平成って脳トレすごく流行ったイメージ。まあたのしい脳の体操というか時間つぶしにはなるけれども、「トレーニングが上手くなるだけ」とは。

訳者あとがき(久山葉子さん)も読み飛ばさずに。著者と訳者のタッグが良く大成功したのが伝わり内容をすんなり受け取れる良書。

スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンさんの著書は「一流の頭脳」サンマーク出版も60万部を超える大ベストセラー。(こちらのリンクは広告を含みます)

2020年に「一流の頭脳」のジュニア版である本書(「最強脳」)が、児童文学作家のマッツ・ヴェーンブラードさん執筆協力で誕生。スウェーデンではこの本がNPOを通じて希望した学校に無料で届けられこれまでに11万6千人の生徒が受け取っているそうです。

「日本でも多くの大人や子供にこの本が届き、自分最強の脳を手に入れ、ストレスに強くなることを願っています。」と結ばれています。

良い気づきがたくさんありました。ありがとうございます。運動、少しずつ増やしてみます。

そして猛暑のなか寒い中チャリで常に足を動かしているのは日常のなかでとても良いことだったのだな、と運動をまったくしていないことでもなかったな、と少しホッとしました。自転車移動も運動だ、と書かれていたので。マイママチャリ、これからも末永くよろしくな、という気分です。アイ足でもある。大切に使ってあげなくちゃ。まずは今出来る身近なことから大切に。そして散歩を増やしたい。歩こう。

最強脳」については以上です。前編で触れた同じくアンデシュ・ハンセンの「多動脳」ADHDの真実(こちらのリンクは広告を含みます)も読んでみたいです。

帯の言葉「その弱点が「能力」になる」が非常に気になりますよね。

脳は自分の持ち物であり操縦士なのですからもっと知るべきだとも思います。

脳を見方にしてこれからの人生をより良く出来たら、そう願いますし、気になる方はぜひご一読を。